第一章 石炭の需給

1.石炭資源

インドや中国をはじめとするアジア地域の経済成長に伴うエネルギー需要は、2008年9月15日の米国企業リーマンの破綻に始まる金融危機以前までは急激に拡大してきたが、その後の景気後退により世界のエネルギー需給は緩和している。しかし、石炭は他の化石燃料に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が多いという環境面での制約があるものの、地域的な偏在性が少なく、他の化石エネルギーに比較すれば豊富な埋蔵量と単位熱量当たりの価格低廉性など経済性で優位性を持つ資源であるため、将来的には更なる需要拡大が見込まれる。

現状は、新規探査や炭鉱設備投資が低迷しており、新規の炭鉱開発にはリードタイムを要するため、既存炭鉱の生産拡大以外の供給増加要因が少なく、世界の石炭供給は将来的に不安定化するおそれがある。経済の持続安定発展には、国民理解と地球環境問題対応を前提とした石炭の安定供給と環境に調和した利用が重要である。

2007年の世界の石炭生産は64.88億トンと、前年の61.44億トンから5.6%増加した。褐炭を除いたハードコール生産は、55.429億トンと6.5%の増加であった (IEA CoalInformation 2008)。

石炭は、世界の一次エネルギー消費の28.6%、アジア・太平洋区域では49.9%を占めるが、貿易量は2007年で9.17 億トンとハードコール生産の16.5%に過ぎず、地産地消型で国際商品と なる量と割合は少ない (Coal Information 2008)。

2007年は豪州、中国、インドネシア、南アフリカなどの石炭生産国において豪雨・豪雪など異常気象による生産停滞とともに、輸送インフラの制約が需給逼迫を招いた。生産者では労務費と資器材コスト高騰および技術者不足が顕在化した。供給面では、新規サプライヤー不足と輸送インフラ制約問題解決が命題で、石炭生産国における新規探査・開発投資や輸送インフラ整備が需給安定化に求められている。リーマンショック後の2008年後半からは、需要停滞に伴う供給過剰が顕在化し、豪州炭鉱では生産縮小、人員合理化が実施されている。

ベトナムやインドネシアなどの生産国では、輸出抑制策や内需優先政策が表面化して、資源ナショナリズムが表面化していることに注意が必要である。

石炭価格は2003年頃から上昇し始め、2007年後半から急騰し、2007年度では我が国への豪州一般炭契約価格125USD/t、原料炭契約価格300USD/tという高水準に上昇したが、鉄鋼・電力向け需要が縮小し、2009年度は一般炭70-72USD/t、原料炭128-129USD/t程度の契約価格水準と言われている。需要低迷を受けて原料炭鉱では生産調整を既に開始しているが、一定の石炭価格水準にない場合は上流分野の新規投資が行われないおそれがある。

国内炭は、坑内採掘1炭鉱と露天掘7炭鉱が稼働して2008年生産は122.8万トン、シェア0.6%である。輸入量は2007年の1億8,648万トンから2008 年は1億9,167.4万トンと2.8%増加した。

1.1 石炭資源

石炭埋蔵量算定について、JISでは、確実度に応じて確定炭量、推定炭量及び予想炭量に分け、賦存深度で第一類と第二類に区分している。炭丈は基本的に0.3m以上を対象にしている。世界エネルギー会議(WEC)では、確認埋蔵量、確認可採埋蔵量、概算追加埋蔵量、概算追加可採埋蔵量で定義している。確認埋蔵量は、「利用可能な技術により,現在及び今後予想される各国の経済条件下で実際に回収可能な量」であり、そのうち既存技術で、現在或いは将来の経済状態において将来的に回収可能とされるのが確認可採埋蔵量であるが、定量的な世界統一基準は存在しない。
WECは3年毎に、各国の埋蔵量報告を集計しており、2005年末では世界の石炭可採埋蔵量を8,474.88億トンとしている。埋蔵量の内訳は、瀝青炭・無煙炭が4,308.96億トン(50.8%)、亜瀝青炭が2,668.37億トン(31.5%)、褐炭は1,497.55億トン(17.7%)である(WEC 2007 Survey of Energy Resiurcwes )。
http://www.worldenergy.org/publications/survey_of_energy_resources_2007/default.asp

我が国の資源量は、-900m以浅域で47.68 億トン、可採埋蔵量は3.55億トンである (WEC-2007)。

図.1.1-1にWEC2007での可採埋蔵量の地域分布を示す。北米、欧州で過半数を占め、アジアが次いで多い。埋蔵量(R)を生産量(P)で除した可採年数は、石油が41-42年、天然ガスは60-67年で推移しているが石炭は、急速な生産拡大と新規投資の不足等により漸減しており、2008年末では(R/P)=133年である (BP 統計2008)。


図.1.1-1 世界の可採埋蔵量と可採年数