第一章 石炭の需給

2.石炭需給と石炭価格

国際市場では、輸出 ( 9.58億トン ( IEA 2009 - coaloverview 2007 ) ) の74%が上位5ヶ国に集中し、輸入量は上位5ヶ国で38.1%と地域は分散している。我が国は世界の石炭貿易の23%を輸入している世界最大輸入国である。石炭需給に関しては、中国・インドをはじめとする諸国の経済成長に伴う世界的な需要拡大により、消費が拡大してきた。

世界の2007年の石炭消費量は、前年比3.3%増加し、31.356億toe (石油換算) ( 64.179億トン ( IEA 2009 - coaloverview 2007 ) )、 世界消費の41.3%を占める中国が前年比7.9%、2000年比で+96.5%と近年急増している。米国は18.1%を占めて2000年比で0.8%の微増であるが、インドは6.5%前年比6.6%増加し、2000年比で+44.2%増加している。世界全体では消費は+4.5%増加し、2000年と比較すると35.8%増加している。

世界の石炭消費は今後アジアを中心に増加し、2030年には96.6億トン規模にまで拡大する。石炭消費はOECD・EUを除いて各地域で増加するが、発展途上国での増加が著しい。

特に、世界の石炭消費増加量の8割近くがアジアによるもので、その増加は中国とインドが太宗を占める。今後とも発電用石炭を中心にアジア区域の石炭消費は増加し、世界の石炭消費に占めるシェアは拡大する。

炭種別では、発電用石炭の需要が将来的に増加することから、一般炭消費量が2030年には76.7億トンまで増加する。原料炭消費は、2030年に9.4億トンと微増に留まると考えられる。

アジアの石炭消費は、電力需要の増加に伴い発電用炭を中心に増加し、2030年60.0億トン規模まで拡大する。中国とインドを中心にアジア地域では石炭を軸とした一次エネルギー構成が維持されることから、石炭消費は増加する。

2030年には、中国で37.6億トン、インドでも発電用を中心に13.6億トンと石炭消費量は増加する。

東南アジアでは(中東を含め)、ベトナムやインドネシア等の国々で電力需要増加に対応した、石炭火力発電所の建設が計画されており、石炭消費が拡大する。

石炭生産国では、輸送インフラ能力からの供給制約要因があるが、世界的な消費低迷の現状では、既存炭鉱の拡張や新規炭鉱の探査・開発投資が縮減・見直しされ、また減産等の人員削減・合理化により石炭企業の経営基盤が不安定化し、僅かな生産障害で大きな供給不安を招くおそれがある。

中国、インドネシア、ベトナムなどの生産国においては、外資規制、輸出抑制、内需優先策などの資源ナショナリズムの台頭が見られ、国際的な石炭需給の将来のタイト感を強めている。

石炭供給では、価格さえ問わなければ何時でもユーザーが望む品質の石炭が必要量確保できるという「神話」が崩れ、従来の価格形成プロセスでは説明が付かない高い価格設定が昨年後半以来続いていた。一時は、国際価格高騰により、国内産石炭が競争力を回復し、既存炭鉱での増産が計画されたが、現状の120〜140万トン規模からの大幅減産は、鉱区埋蔵量規模や開発技術的に困難である。

2007年から豪州、インドネシア及び南アフリカなどの石炭輸出国で豪雨・豪雪による供給障害が需給を一時的にタイト化したが、現在はリーマンショックに端を発する世界的な景気後退のなかで需要は低迷している。

直近では需給は軟化しているが、この傾向が今後とも続くとは予測できない。生産国での炭鉱投資への継続拡大がない限り、国際市場への供給ポテンシャルは現状から改善されず、供給の不安定性は続くと思われる。

2.1 石炭価格

石炭は、原油等と異なり品質が多様であることから、ユーザー側も石炭品質には条件があり、世界規模の先物取引市場が形成されず、 従前から商慣行として個別価格交渉が主流である。

産炭国における国内産石炭は、山元価格+国内輸送費のコストベースで取引されており、国際的スポット価格等と連動しないため、産炭国では貿易価格変動が最終消費者に影響を及ぼさない。

我国のエネルギー価格において、石炭は他の化石燃料に比べ、単位熱量当たり価格が一般炭:天然ガス:原油=1:2.5:4 (2008年上期)で、引き続き経済的優位性を有している。図.2.1-1に示すように油炭格差が維持され、経済的優位性を保持している。特に、原油価格高騰に比較しても、その上昇幅は緩やかである。

2008年9月のリーマンショック以降、一般炭スポット市場価格は低位で推移している。このため、2009年度の我が国ユーザーの石炭契約価格は、豪州一般炭FOBで70-72USD/t、豪州原料炭 (強粘結炭)では128-129USD/tと急落している。

原油価格は、2008年5月にドバイ原油で128USD/バレルと2007年の約7割値上がりし、その後も高騰したが、石炭以上に景気後退の影響を受けて価格は下落した。


図.2.1-1 エネルギー源別価格比較 (大蔵統計からJCOAL)

一般炭価格指標(BJI)は需要の増加を基調に、豪州の豪雨や中国に於ける豪雪の影響から2007年後半から高騰し、2008年7月に豪州一般炭スポット価格指標BJIで一時190USD/t以上という高値を付けた。その後は下落しており、2009年4月現在では63USD/tの水準にある。

石油価格は、IEAの見通し ( World Energy Outlook 2008 )では、原油価格は変動要因が大きく、経済危機が長引けば更なる価格低下を来すとされているが、2015年以降は開発コストが原油より高い非在来型石油資源のシェアが拡大し、供給コストの上昇が予想されている。

豪州証券取引所ASX(シドニー)では、2009年に石炭先物取引市場が開設予定であるが、2008年度末時点では未だ開始されていない。これは、主に生産者とユーザーの個別交渉で決定していた石炭価格変動リスクの軽減を目的としているが、多様な品質を取り扱う石炭の標準化が課題である。


図.2.1-2 原料炭・一般炭輸入価格推移 (大蔵統計からJCOAL)


図.2.1-3 一般炭価格の推移(JCOAL)


図.2.1-4 原料炭価格の推移(JCOAL)


図.2.1-5 米国原料炭価格推移 (出所:EIA)


図.2.1-6 石炭価格(FOB)推移 (JCOAL-Platts)

様々な要求品質と数量および調達期限が異なる需要、供給、輸送費用、エネルギー政策等が石炭価格に影響する。石炭積出価格FOBは、国際スポット市況に連動し、概して最安値はインドネシア炭カリマンタン港価格である。


図.2.1-7 EU・アジアでの石炭価格(CIF)推移 (JCOAL-Platts)

CIF価格はCIF-JAPANで230USD/tを頂点にして、現在は80USD/t程度であり、海上輸送運賃の高騰も収まってきている。
 中期的には、近年の中国からの石炭輸出減少が国際市場へ影響すると考えられる。EUの環境対策(炭素税)、米国のエネルギー政策(環境課徴金)動向、更に輸送費等が価格影響要因となる。